マツダ株式会社

本事例のポイント
業務:車両開発における設計業務
課題:
経験の浅い設計者にとって、設計資料の読み解きや設計適用の判断が難しく、設計検討品質が安定していなかった
設計検討品質が安定しないことで、エキスパートとのすり合わせ時の指摘・手戻り、レビュー工数が増大していた
活動:
設計要件抽出に対するエキスパートの思考を分析し、判断基準を明確化
記載内容のバラつきを抑え読み解きやすい、設計資料の記載内容の定義とフォーマット整備
エキスパートの判断基準を再現して、組織的、継続的に活用するシステム基盤(SpectA DKM)を導入
結果:
設計者の個人スキルに依存せず、設計要件抽出の質が向上し、レビュー時により重要な観点に基づく指摘が可能に
設計資料の品質が安定することで、新たなノウハウを活用しやすい形で蓄積しやすくなった

マツダ株式会社は「走る歓び」を軸とした新たなブランド戦略のもと、環境性能・安全性能の強化も同時に追求しながら、「ひと中心」の開発哲学と「マツダものづくり革新」を発展させてきました。お客さまとの感情的なつながりを大切にし、選ばれ続けるブランドづくりを進めています。
近年の車両開発は複雑化、高度化し、開発負荷は増大しています。そのなかでお客さまのニーズを反映し市場に素早く投入することは開発上で重要な要素のひとつです。しかし、限られた開発期間のなかで、高い品質を担保することは難しく、高度な知識と技術を持つ熟練設計者(以下、エキスパート)に頼らざるを得ない領域もある中で、そのエキスパートは減少しています。 マツダの車両開発の現場においても、開発の過程で蓄積される高度な知識や技術を組織全体で効果的に活用し、次世代へ継承していくことが重要なテーマとなっています。マツダは、このテーマへの対応として、設計業務の品質向上と安定化に向けた取り組みを進めていました。
その一環として、マツダとSOLIZE Ureka Technologyは、設計要件抽出におけるエキスパートの知見を体系化し、開発者自身がより網羅的かつ効率的に設計要件を抽出できる仕組みの構築に取り組みました。
車両開発における設計業務では、設計品質を担保するために専門領域の設計要件を抽出して検討・検証を行いますが、経験の浅い設計者にとって要件を漏れなく抽出することが難しい状況でした。 設計時には、部署内の情報だけでなく専門領域の実験・対策・市場環境など、多岐にわたる情報を参照する必要がありますが、これらの記載内容は前提情報が不足していて、当事者でなければ理解しづらい内容や、統一されていないフォーマット、専門用語や略語の使用などによって、再利用(情報を探して設計検討に活用)しづらい、暗黙的・属人的な(設計者の経験や読み解く力に依存した)状態になっていたことがその要因でした。
そのため、今回の開発に関係する情報か、設計要件として反映すべきかの判断は設計者の経験や想定シーンの解釈に左右されやすく、エキスパートからの指摘を受けて初めて必要な観点に気づく場合もあり、設計者自身では必要な設計要件を十分に抽出しきれないままレビューに臨むことで、指摘増加、手戻り、再レビューの発生につながっていました。
これらの状況を受け、設計要件を抽出する際の判断基準の明確化と設計をとおして、設計資料の記載内容を利活用しやすい状態に整備する取り組みを行うことにしました。
まず、当該領域のエキスパートがどのような観点で設計要件を抽出しているのか分析しました。その結果、おもに開発対象のレイアウト情報をもとに、設計要件が関係するか否かを判断していることが分かりました。そこで、各設計要件のレイアウト情報を明確にして紐づけました。これにより経験や読み解く能力などの個人差に左右されにくい形で設計要件を抽出できるようになり、抜け漏れの低減と設計検討品質の向上・安定化につながりました。
また、これまでは検証資料の記載内容が定義されておらず、バラつきがあり再利用性が低いものでしたが、記載すべき情報を定義し、標準のフォーマットとして整備しました。その結果、個人のまとめ方に依存せず、記載内容のバラつきが抑えられ、情報を読み取りやすくなるなど、検証資料の品質が安定しました。さらに、新たなノウハウとして蓄積する際にも、最小限の情報を補足・付与するだけで済むようになり、蓄積の負荷も減少しました。
設計者の検討品質が向上したことで、レビュー時においても、エキスパートも同じ形式・観点・粒度で確認することができ、あたりまえ指摘が抑えられ、本質的な指摘やフィードバックが活発になるなどの品質向上につながる結果が得られました。


こうした成果を継続的に活用するための基盤として、マツダはSpectA DKM※1を導入しました。SpectA DKMは、エキスパートが情報を的確に探索する観点をシステム上に再現することができ、この観点に沿って誰でも同じように情報を抽出することが可能です。マツダにおいても、エキスパート同様の判断基準がシステム上で再現され、適切に設計要件を抽出して検証資料へ反映できる状態になりました。
SpectA DKMに予め設計要件のデータを登録することで、UI上には判断基準に合わせた選択肢が表示されるようになります。設計者はこのUI上で今回の設計条件に合わせて入力・選択することで、適切な設計要件を抽出することができます。また、抽出した設計要件は検討しやすい標準のフォーマットに出力することもできます。これにより、判断基準に沿って設計要件を抽出することや、標準のフォーマットを用いて進めることなど、今回の活動のなかで定めた成果を意識することなく、誰でも同じように再現することが可能です。抽出した結果は個別に残すことができ、自分自身で後から確認できるだけでなく、他の設計者に共有し再現することで、結果に至ったプロセス自体を確認・評価することも可能です。
このように、運用ではなく仕組みで設計要件抽出の品質向上を支援することで、技術レベルの違いによらず誰でも同じように検討を進められるようになりました。
SOLIZE Ureka Technologyは、本取り組みで得られた成果をもとに、さらなる設計品質の向上・安定化を図るとともに、ノウハウの蓄積・活用サイクルを推進していきます。
※1 SpectA(スぺクタ)とは、「企業の競争力の源泉である人や組織の暗黙知」と「自然言語処理AI技術」を掛け合わせることで、熟練者が培ってきた経験やノウハウを組織知へと変換し、ダイナミックな知恵の活用を実現する、当社のサービス・製品の総称。SpectA DKM(スぺクタ ディー・ケー・エム)とは、設計検討における情報活用課題への対策に特化したAIソリューション。自動車OEM・Tier1などの開発設計現場において急速に導入が進んでいる。当社はSpectA DKMを通じて、ものづくりの英知を最大活用できるプラットフォームを提供し、日本のものづくり全体の創造生産性の向上に寄与していく方針。
Urekaについて
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