導入事例

P&ID設計・レビュー業務における設計品質の向上および安定化を実現
~設計・検討・判断プロセスの再設計と、ノウハウを組織の知恵として活用する仕組みの構築~

日本ゼオン株式会社

日本ゼオン株式会社

本事例のポイント

業務:プラント設計におけるP&ID検討・レビュー業務

課題:設計ノウハウの属人化、判断基準のバラつき、過去資料の散在による、設計品質の不安定とレビュー負荷増大

活動:
レビュー業務とノウハウ蓄積を連動させた業務プロセスの再構築
・設計者・レビュアーの判断基準および根拠の明確化・定型化
・判断基準・根拠を組み込んだナレッジの体系化
・継続的に、適切なタイミングで的確なノウハウを抽出・参照する活用基盤整備

結果:

・組織知に基づいた確認・判断により、設計品質が向上、レビュー工数が削減
・レビューでの指摘事項が、組織知として業務プロセスのなかで蓄積されるようになった

技術力を競争優位の源泉とするための、プラント設計力強化

日本ゼオン株式会社は、「大地の永遠と人類の繁栄に貢献する」という企業理念のもと、独創的な技術・製品・サービスの提供を通じて、「持続可能な地球」と「安心で快適な人々のくらし」への貢献を目指す化学メーカーです。日本で初めて合成ゴムの国産化を成し遂げた企業として、自動車用タイヤ向け合成ゴムや高機能樹脂をはじめとする幅広い製品を、グローバルに提供しています。同社は2030年のビジョンとして「社会の期待と社員の意欲に応える会社」を掲げ、中期経営計画においては、モビリティ、医療・ライフサイエンス、情報通信、GX(グリーントランスフォーメーション)の4分野を成長領域と定義しています。世界に誇り得る独創的技術を強みに、事業ポートフォリオの高度化と持続的成長の実現に取り組んでいます。

これらの成長戦略を支える基盤となるのが、高品質かつ安定的なものづくりです。一方で、製品の高機能化や用途の多様化、グローバルでの事業展開の進展により、プラント設計にはこれまで以上に高度な設計力と迅速な立ち上げが求められるようになっていますが、その設計品質はベテラン設計者による経験や知見の積み重ねによって支えられている状態です。加えて、設計・生産技術領域における人材構成の変化や技術継承といった課題も、無視できないテーマとなりつつあります。
同社の 生産技術部では、プラント設計を通じて得られる知見を、一過性の指摘や個別判断にとどめるのではなく、次の設計に確実につなげていくことが重要なテーマとなっていました。

力のあるものづくり体制を確立するため、プラント設計検討業務およびレビュー業務を見直し、ノウハウを「判断に使える形」で整理・活用するための業務変革に着手しました。

設計ノウハウの属人化により、
設計品質がバラつき、レビュー負荷が増大

同社では、事業拡大と設備の高度化が進むなかで、プラント設計の品質向上と効率化が大きなテーマとなっていましたが、
なかでも、プラント設計の中核となる P&ID(配管計装図) の作成・レビュー業務において、次のような課題が顕在化していました。
 ・設計ノウハウの属人化:ベテラン技術者の経験や判断が個人の知識に依存しており、体系的な共有が難しい状態。
 ・レビュー負荷の増大:品質確保のためレビューを重ねる一方で、レビュー工数や関係者の負担が増加。
 ・設計基準のバラつき:設計者ごとの経験差により、指摘の再発や修正手戻りが発生。
 ・過去知見の活用が困難:過去のレビュー指摘や設計上の判断理由が分散しており、必要な知見を迅速に参照できない。

これらを改善するには単にノウハウをまとめるだけ、検索の仕組みを導入するだけでは一過性の結果となり、十分な成果は得られず、継続的な運用も期待できません。
そこで下記の方針で検討を進めることにしました。
 ・設計ノウハウを“まとめる”のではなく、レビュー業務をノウハウ蓄積の起点として、継続的に“業務のなかで生み出す”ための、業務プロセスの細分化・再構築
 ・設計やレビューで判断するための、判断基準および根拠の明確化・定型化
 ・判断基準・根拠を組み込んだナレッジの体系化

ノウハウを業務のなかで生み出し、設計/レビューの判断に活用する

まず、P&ID検討・レビュー業務のプロセスを整理し、どの段階で、どのような観点の確認や判断が行われているのかを可視化しました。
また、レビュー時の指摘や設計時の判断を収集して分析しました。
これらの結果、以下のような観点でノウハウを整理することにしました。
 ・どこに着目すべきか
 ・どのような条件で適用されるのか
 ・何を判断・実行すべきか
 ・その判断の背景・根拠は何か
これにより、これまで単なる指摘事項として残していたものを、設計者・レビュアー双方が「どの観点に着目し、何を根拠に判断すべきか」を理解・再利用しやすいノウハウとして整理することが可能になりました。

次に、設計レビューの議事録を単なる記録ではなくノウハウを残すための入口として位置づけて、実務のなかでノウハウを増やし活用し続けられるように、レビュー業務とノウハウ化を連動させた業務プロセスとフォーマットを整備しました。
これにより、追加工数を極力増やすことなく、レビューのなかで生まれる指摘や判断理由をノウハウとして蓄積することが可能になりました。

Before:設計ノウハウの属人化により、設計品質がバラつき、レビュー時の負荷が増大

After:レビュー指摘を再利用可能なノウハウとして蓄積、必要なタイミングで最大活用し、設計品質の向上とレビュー工数削減を支援

継続的・恒久的な運用の基盤として「SpectA DKM」を導入

これらの取り組みを通じて、P&ID検討・レビュー業務におけるノウハウは、一定の量と質で整理・蓄積される状態になりました。
さらに、構築してきた設計ノウハウ資産を将来にわたって活用し続けるための基盤として、SpectA DKM※1の導入を進めました。
P&ID検討では案件自体は過去事例との類似性は必ずしも高くなく、数多くの検討ポイントが存在するため、個々の検討ポイントに対してより関係性が高いノウハウを、より上位に抽出することで、気づきに繋げて検討に活かせることが重要となりました。
そこで、設計者がイメージする検索文/キーワードの入力には自由度を持たせつつ、単に「もの」と「こと」の類似性が高いノウハウを上位に表示するだけでなく、ノウハウ抽出に寄与しないキーワードによって上位に出ないように、また特に着目するキーワードを”重要語”として指定して、更に上位に寄せる機能を活用することで、より有用なノウハウを限られた検討時間のなかでもP&ID検討に活かす仕組みにしました。

これら一連の取り組みにより、
 ・P&ID検討・レビューで活用できるノウハウを、個人の経験に依存せず、組織の資産として蓄積
 ・より有用なノウハウを必要なタイミングで検索・参照できることで、設計検討のバラつきが低減し設計品質が向上、安定
 ・レビューに持ち込まれる設計品質が上がることで、チェック漏れ低減・再発防止、レビューの質の向上、レビュー工数の削減
といった成果が得られました。

※1 SpectA(スぺクタ)とは、「企業の競争力の源泉である人や組織の暗黙知」と「自然言語処理AI技術」を掛け合わせることで、熟練者が培ってきた経験やノウハウを組織知へと変換し、ダイナミックな知恵の活用を実現する、当社のサービス・製品の総称。SpectA DKM(スぺクタディーケーエム)とは、設計検討における情報活用課題への対策に特化したAIソリューション。自動車OEM・Tier1、などの開発設計現場において急速に導入が進んでいる。当社はSpectA DKMを通じて、ものづくりの英知を最大活用できるプラットフォームを提供し、日本のものづくり全体の創造生産性の向上に寄与していく方針。

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