株式会社コベルコE&M

株式会社コベルコE&Mは、KOBELCOグループの一員として、製鉄所・発電所・化学プラントなどの社会インフラを支える設備の設計・施工・保守を担う総合エンジニアリング企業です。長年にわたり培った幅広い知識と、応用性の高い技術により、期待を超える価値を提供し続けています。
近年の労働人口の減少や、時間外労働規制の強化により作業者の確保が難しくなるなかで、労働災害防止に向けた取り組みは一層重要性を増しています。こうした背景のもと、労働災害防止を活発に推進しているものの、撲滅には至っていません。そのおもな要因として、被災者自身のKY(危険予知)不足、すなわち【安全実力の不足】や、作業リーダー・監督によるKY指導の不足が挙げられ、具体的には以下の2点が課題となっています。
コベルコE&Mは、KOBELCOグループや社内の災害事例を利活用して、KYを充実させる活動を推進してきました。しかし作業者自身の作業に直接関連する事例を、簡単に検索・抽出しにくい状況であったため、十分な利活用に至っていませんでした。特に近年は経験の浅い作業者が増加し、十分な作業経験を積む前にKY活動を実施するケースが増えていることから、この課題が顕著になってきています。
繰り返し作業であっても、作業条件や環境の変化に応じて異なるリスクが潜んでいます。同種の作業が続く場合は、KY活動でリスク抽出が定型的になりやすく、多様な視点からのリスク対応が十分に確認されないまま作業を開始することがあり、その結果災害につながる事例が見られました。
こうした課題を踏まえ、比較的経験の浅い作業リーダーでもKOBELCOグループや社内で蓄積されたリスクや災害リスク、対策、規程などの知見を、簡単に活用できる仕組みが必要だと考えました。そこで、知見を生成AIで分析し、誰でも簡単にリスクとその要因、対策を抽出できるSpectA KY-Tool※1の活用と展開を進めることを決定しました。
SpectA KY-Toolの導入・展開で目指したのは、以下の2点です。
事例を読んで、次の一歩へ
現場で写真を撮るだけで、AIが「リスク検討」と「パトロール報告書作成」をサポート
誰もが必要な事例を即検索・利活用が可能に
過去の災害事例や安全規程・ガイドライン、安全教育資料などの自社の安全対策ノウハウを体系的に整理し、KYに必要なデータを精査して登録しました。その結果、作業内容・作業エリア・作業形態といった観点で安全対策ノウハウを絞り込んで検索できるようになり、必要な情報を把握・利活用できる環境が整いました。
整理された自社の安全に関する知見と生成AIを組み合わせることで、写真を起点に現場の状況を解析できるようになりました。その結果、想定されるリスクや要因、対策を抽出できるようになっています。さらに、関連する過去の災害事例もあわせて提示されるため、安全指示の根拠となる情報を効率的かつ正確に確認できるようになっています。

活用場面を明確化し、スムーズな導入・展開が可能に
導入を進めるなかで、SpectA KY-Toolを活用してほしい場面を明確にしました。工事計画段階、安全指示準備や当日のKY活動、安全教育などの各場面について、「どんな情報を入力するのか」「結果をどの場面でどのように活かすのか」を決めています。各場面での使い方が明確でない場合、「いつ・何を・どのように使えばよいか」がわかりにくくなります。その結果、ツールが使われなくなってしまう懸念があったためです。活用場面を具体化したことで、使用者は自分の業務にどう活かすかをイメージしやすくなりました。

対象とした活用場面
一方で、活用場面を明確にするだけでは現場への定着は十分ではありません。そこで、業務フローの整理やツール活用場面の具体化といった運用改善に加え、対面での説明会や現場リーダーの育成を通じて現場とのコミュニケーションを強化しました。現場の声を継続的に運用へ反映することで、現場定着を促進し、現場課題の解決を進めています。
現在は、特定グループでの活用を中心に進めており、SpectA KY-Toolへの理解が少しずつ深まってきています。
これにより、今後より多くの現場・業務で活用していくための土台が整い始めています。また、導入・展開を進めるなかで、次のような効果も見え始めています。
経験豊富な作業者であっても、作業中に考えられるすべての災害リスクを抽出することは容易ではありません。しかし、SpectA KY-Toolの生成AI機能の活用により、さまざまな観点から災害リスクが提示され、これまで意識できていなかった災害リスクにも気づけるようになりました。たとえばプラント建設工事では、仮設手すりに一見問題がないように見える場合でも災害リスクを把握できます。実際には、支柱の間隔が基準より広く、構造的な弱点がある可能性に気づけるようになりました。
さらに、災害リスクを指摘するだけで終わらず、法的根拠を踏まえて支柱間隔を2m以下に再調整するといった、具体的な是正対策につなげられている点も大きな効果です。

作業者が「何となく危険かもしれない」と感じていても、その内容をはっきり言葉にしにくい場合があります。そのため、ほかの作業者に対して具体的な指示や注意事項を伝えきれず、結果として見逃されてしまう危険がありました。これに対し、SpectA KY-Toolの生成AI機能を活用することで、誰にでも伝わるような具体的な言葉にできるようになりました。たとえばブロワ(送風器)の運搬作業では、これまで「周囲の確認不足で人にぶつかる」といった抽象的な理解にとどまっていました。しかし現在は、「フォークリフトの死角にほかの作業者が入り込み、後退時に接触する」といったように、「どこで・いつ・何が起きるか」を具体的な災害リスクとして認識できるようになっています。これにより、具体化した災害リスクをKY活動で共有することで、使用者が新たな視点で災害リスクを意識することにつながっています。

事例を読んで、次の一歩へ
現場で写真を撮るだけで、AIが「リスク検討」と「パトロール報告書作成」をサポート
コベルコE&Mでは、SpectA KY-Toolの導入を契機として、安全文化醸成と個々人の安全実力を高める取り組みを継続的に推進しています。
直近の活動ではSpectA KY-Toolが有効に機能する業務を役職ごとに整理し、個人単位で取るべき具体的なアクションを明確化しました。こうした改善を重ねることで、あらゆる安全活動のなかでの活用を進めていきます。
今後はこうした取り組みを活かし、属人的な判断に基づく従来のKYから、客観的なデータや事例を根拠とした「データ利活用型KY」へと進化させていきます。一人ひとりの安全実力を高めることで、KY不足に起因する災害ゼロの実現を目指します。

各役職における有効業務対応表
※1 SpectA(スぺクタ)とは、「企業の競争力の源泉である人や組織の暗黙知」と「自然言語処理AI技術」を掛け合わせることで、熟練者が培ってきた経験やノウハウを組織知へと変換し、ダイナミックな知恵の活用を実現する当社のサービス・製品の総称。SpectA KY-Tool(スぺクタ ケーワイ ツール)とは、安全管理業務における情報活用課題への対策に特化したAIソリューション。建設業やプラントEPC、O&Mなどの製造現場において急速に導入が進んでいる。当社はSpectA KY-Toolを通じて、工事現場での安全意識向上と労働災害削減を実現し、日本の産業横断的な安全管理水準の底上げに貢献していく方針。
「これまで災害を経験するなかで、若手の安全意識は本人任せにするものではなく、教え方次第で大きく変わるものだと感じてきました。一方で、当社の安全教育は必ずしも体系的とは言えず、部署ごと、指導者ごとに任されていた部分があり、その結果としてバラつきが生じていたのも事実です。本来であれば、まず誰に対しても共通のベースをきちんと教え、そのうえでベテランのノウハウを積み重ねていくことが重要だと考えていました。しかし今の時代、災害から学ぶことは難しくなっています。だからこそ、過去の災害や失敗事例を活用し、疑似的に経験できる仕組みが必要だと考えました。SpectA KY-Toolは、関連する事例を具体的な形で提示することで、自分たちで考え、議論することを促してくれます。重要なのはツールを入れることではなく、安全な会社であり続けるために、人を育てる手段として使い続けることだと思っています。そうした取り組みを積み重ねながら、組織として安全と品質を着実に高めていければと考えています。」

安全衛生部 部長
酒井 宏之様

安全衛生部 専門部員
小藤 晃弘様
「近年の災害事例を振り返るなかで感じていたのは、安全教育の進め方が属人的になり、組織として安定して回らなくなってきている点でした。ベテランの定年退職が進み、若手の経験値も限られるなかで、これまで人に頼って成立してきた教育の形には無理が生じつつあります。実際、安全教育は部署や職長ごとに任され、その結果として意識や実践にバラつきが出ていました。このままでは、組織全体として安全教育を維持できなくなるという危機感がありました。だからこそ、人で補えない部分を仕組みとして支える必要があると考えました。その点、SpectA KY-Toolは、人に頼ってきた安全教育を仕組みとして支える一つの手段になり得ると感じました。結果として、安全教育を個人に任せきりにせず、組織として考えていくための形が見えてきたと思っています。」
「SpectA KY-Toolの導入に関わるなかで、特に意識していたのは、現場で無理なく使える形になっているかどうかでした。現場にはそれぞれのやり方や考え方があり、新しいツールに対して慎重になるのは自然なことだと思います。安全やKY活動の課題自体は以前から認識されていましたが、ツールとして現場に持ち込む以上、少しでも使いにくさや手間があると、使われなくなってしまいます。現場としては、いかに簡単に使えるかが重要でした。SpectA KY-Toolは生成AIが考える土台となる災害リスクや対策を提示してくれることで、何を検討すればよいかがわかり、現場で議論を始めやすくなったと感じています。また、導入の過程でSOLIZE Ureka Technologyさんが現場に何度も足を運び、率直な声を聞きながら改善を重ねてくれたことで、要望が実際に反映され、その変化を現場自身が実感できていたと思います。推進する立場として、現場と同じ目線で伴走してもらえたことは、導入を前に進めるうえで非常に心強かったです。」
※所属・役職は本活動推進時のものです

安全衛生部 専門部員
髙次 秀幸様
事例を読んで、次の一歩へ
現場で写真を撮るだけで、AIが「リスク検討」と「パトロール報告書作成」をサポート

中電プラント株式会社 - 現場で得た気づきをその場限りで終わらせない 安全パトロールを支える記録・共有・活用の仕組みづくり
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