A社様
プラントや大規模設備といった受注型産業において、見積り回答のスピードと精度の両立は、受注確率や受注後利益に特に大きな影響を与えるため、事業リスクの最小化に向けた重要な要素です。
しかし、それらを左右する見積り・計画策定業務は、インプット情報(要求スペック等)が非定型かつ膨大であり、人為的な見落としや解釈の違い等による追加コスト発生のリスクがあるため、熟練者に依存している状況です。
RFQ読み込み業務における課題
また、熟練者であっても精度やスピードにバラつきが生じる場合があることや、熟練者の人数や業務時間に制約があることから、案件処理上のボトルネックにもなっていました。
当社はA社様に対し、熟練者の暗黙的なノウハウをAI技術で再現し、最大活用することを目指した仕組みづくりをご提案しました。多くの場合、熟練者のノウハウと呼ばれるものは暗黙知である場合が多く、その伝達や活用、継承を困難にしています。A社様では、RFQ(Request for Quotation:見積依頼書)に対して熟練者それぞれが個別のルール(注目すべき箇所の抽出とそれに対する具体的な検討方法)をもっており、熟練者自身ですら論理的に説明できない暗黙知となっていました。
そこで本活動は、RFQ読解業務を対象に誰もが熟練者同等の見積り回答のスピードと精度を実現できることを目的に、「熟練者の暗黙的な見方・考え方を体系化し活用できること」の実現を活動のゴールとしました。
①熟練暗黙知の形式知化
はじめに、熟練者のノウハウを「知覚」、「解釈」、「決断」、「実行」の1つのプロセスで捉える当社独自のフレームワークを用いて可視化しました。「知覚」、「解釈」の段階では、インプットとなる大量の設計要求データ群に対する、熟練者による情報の抽出項目・参照順序・検討順序・決定根拠を可視化し、思考順序/思考パターンを解明しました。たとえば、熟練者は頭の中で、顧客の要求体系に沿って書かれているRFQ記載内容から自社標準外の特殊仕様や確認交渉に関連する情報項目を抽出し、自らの事業や業務に必要な設備等の仕様体系に情報変換をしながら解釈していることがわかりました 。「決断」、「実行」の段階では、抽出した特殊仕様に対する顧客との確認や交渉事項の検討において、過去の経験や実績情報と関連付けて、類似の条件に近い案件や業務状況を抽出し、交渉をすべきか、どのような交渉をしたか、どのような結果だったのかという観点で現状に相応しい行動を選択・判断し実行していることがわかりました。
このようなアプローチで、RFQの読解業務に関する熟練者の暗黙的な見方・考え方を類型化し、それらに必要な情報との関連性も含め整理しながら、体系的な知識として構築しました。
熟練暗黙知を形式知化する「知覚」、「解釈」、「決断」、「実行」のフレームワーク
②「SpectA RFQ Guide View™」を実装し業務遂行を支援する仕組みを構築
次に、①のアプローチで形式知化した内容をもとに、当社独自の自然言語処理AI アスペクトエンジン(特許取得済み)を搭載したSpectA RFQ Guide Viewを構築しました。SpectA RFQ Guide Viewは、熟練者が特定業務の課題解決に向けた検討や判断に活用した情報とその活用結果から熟練者のものの見方・考え方を学習し、同様の検討時にその勘所を再現することで高度な業務遂行を支援します。
本活動では、インプットとなる大量の設計要求データ群をSpectA RFQ Guide Viewでフィルタリングすることで、①で整理した仕様体系や知識体系を構成する特徴単語や類似単語、およびそれらを含む文脈を、熟練者視点での重要度や優先度を推測したスコアリング結果と併せて抽出・ハイライト表示する仕組みを構築しました。これにより経験の浅い担当者でも膨大な情報からRFQ読解業務に有益な情報を抜け漏れ無く抽出、優先度に合わせて処理できるようになり、熟練者同等の業務遂行を可能としました。
熟練者の業務遂行力を再現する仕組み「SpectA RFQ Guide View」
SpectA RFQ Guide Viewにより、以下の業務プロセスを実現しました。
これにより、RFQ読解における「膨大な技術文書の読み込み時間の削減」や「重要箇所の見落としや解釈違いによる仕様齟齬の防止」等の課題解決につながりました。
本活動により実現したRFQ読解業務の姿
1. 従来、熟練者の経験に依存し、精度やスピードにバラつきもあったRFQ読解業務が、経験の浅い担当者でも熟練者と同等に安定した結果を得られるようになり、見積り・計画策定業務における見積り回答の処理量・スピード・精度向上を実現
2. 1の結果、人為的な見落としや解釈の違い等による受注後の追加コスト発生リスクを低減
さらに、日々の業務における検討経緯と交渉履歴を蓄積しながら機械学習を繰り返すことで、情報抽出精度の向上と組織の情報資産の進化にもつながっています。
日々の業務成果を蓄積し、組織の英知を進化させる仕組み
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